macOSでLaTeX環境(Drag & Drop UpTeXを使って)
さっきDrag & Drop UpTeX 2019をインストールしたので。
2020/05/13 追記あり
macOSでLaTeXを使えるようにするまで
TeXはオープンソースソフトウェア (OSS) ですが、多くのOSSとは異なり自分でソースからビルドしてインストールすることはほぼありません。多くの場合、LaTeXを扱うにはTeX関連のバイナリ、ツール、スタイルファイル、フォントなどをまとめて含んでいるTeX distributionをインストールして、LaTeX環境を構築します。
TeX distributionはいくつかありますが、日本語なLaTeXをするならpLaTeX
などが含まれているTeX Liveをインストールします。今回はTeX Live 2019をmacOSにインストールする話です。
TeX Live
TeX LiveではTeXに関連するありとあらゆるファイルがそれぞれパッケージとなって収録されています。TeX Liveに収録されている全てのパッケージをインストールするとなるとそこそこ容量が必要です1。TeX Liveは、全体ではなく、自分が必要な一部のパッケージのみインストールすることも可能です。
TeX Liveはインストール時の設定でインストールするschemeを設定でき、それによってインストールするパッケージを調整可能です。scheme-fullでは全パッケージをインストールし、scheme-smallでは一部をインストールします(他にもいくつかschemeがあります)。
日本語なLaTeXするだけならscheme-fullでインストールするのは正直言って無駄が多いです。しかし、TeX Liveのパッケージ管理システムは依存関係が適切に記述されていない場合もあり、その場合自分で必要なパッケージを探してインストールする必要があります。この作業が難しい、面倒と思う方は、scheme-fullで全てのパッケージをインストールしてしまう方法が安全(楽)かもしれません。
macOSでTeX Liveをインストールする方法
macOSにTeX Liveをインストールする方法はいくつかあります。
簡易チャート
- macOS用のpkgファイルを使って(GUIで)インストールしたい
- MacTeX もしくは BasicTeX
- コマンドラインでインストールしたい
- <なんとか>.appのドラッグ&ドロップでお手軽にインストールしたい
- → Drag & Drop UpTeX
Drag & Drop UpTeX
Drag & Drop UpTeXとは、日本語環境のLaTeXを使うのに必要最低限が入っているmacOSアプリケーションです。Drag & Drop UpTeXにはscheme-smallとcollection-langjapanese(TeX Liveで提供されている日本語用パッケージのコレクション)をインストールしたTeX Liveが内蔵されており、アプリのドラッグ&ドロップで日本語なLaTeXがすぐ使えるようになります。
macOSユーザが望みがちなヒラギノを使うための設定(TLContribの設定、ノンフリーなヒラギノを使うためのパッケージのインストール)も済まされており、簡単にヒラギノを埋め込むことができます。
ということで、今回はDrag & Drop UpTeXをインストールします。
Drag & Drop UpTeXでTeX Liveをインストール
ReadMeに従ってください。dmgファイルをダウンロードして、展開して、/ApplicationsにUpTeX.appをドラッグ&ドロップするだけです。
UpTeX.app初回起動時にヒラギノフォントのシンボリックリンクの作成などをしてくれます。macOSにインストールされているフォントのための補助スクリプトを端末で実行する必要はありません。
環境設定でdvipdfmx
がPDFに埋め込む日本語用フォントをGUIで指定できます。Drag & Drop UpTeXでは端末でコマンドを実行することなく簡単にGUIでヒラギノに変更できます(もちろんTeX LiveデフォルトのIPAexフォントにもGUIから変更できます)。
最後に、.bash_profileなどを編集しPATHを通せば、端末でplatex
やdvipdfmx
コマンドが使えるようになります。
Drag & Drop UpTeXを使って簡単に日本語LaTeX環境を整えられました。
TeX Liveのパッケージをアップデート
Drag & Drop UpTeXをインストールした後はtlmgr
コマンド(TeX Live managerの意味)が使えます。インストールされたパッケージで更新を取得したいならなら以下のコマンドを実行してください。
tlmgr update --self --all
LuaLaTeXできない...
日本語なLaTeXとして、platex
ではなくlualatex
でluatex-jaを使いたくなる事もあるでしょう。私が試した限りでは、この場合、Drag & Drop UpTeXをインストールしただけではコンパイルできませんでした。
Drag & Drop UpTeXをインストールした直後の環境(tlmgr install
を使っていない状態)で以下のファイルをlualatex
でコンパイルすると、ctablestack.sty
がないと怒られてしまい実行が中断してます。
\documentclass[11pt,a4paper]{ltjsarticle} \usepackage{luatexja} \usepackage[hiragino-pron]{luatexja-preset} \begin{document} luatex-jaで日本語 \end{document} % Local Variables: % TeX-engine: luatex % End:
よって、ctablestack.sty
をインストールする必要があります。ctablestack.sty
をインストールするにはまず、ctablestack.sty
ファイルがTeX Liveにおいて何のパッケージの中に含まれて収録されているのかを知る必要があります2。
以下のコマンドでそのファイルの収録パッケージ名がわかります。
$ tlmgr search --global --file ctablestack.sty tlmgr: package repositories main = http://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet (verified) tlcontrib = http://contrib.texlive.info/current (not verified: pubkey missing) ctablestack: texmf-dist/tex/luatex/ctablestack/ctablestack.sty
これでctablestack.sty
ファイルはctablestackパッケージとしてTeX Liveに収録されていることがわかりました。
パッケージ名がわかったら、以下のようにしてインストールします。
tlmgr install ctablestack
そうしたら、lualatex
はコンパイルに成功しました。PDFができています。いいですね。
LaTeXソースファイルをコンパイルしたときに、このスタイルファイルが見つからない、と言われたときは上のような手順を取るといいでしょう。
終わり
Drag & Drop UpTeXでのインストールはすごい楽なので、macOSでLaTeX環境を整えたい方は使ってみてはいかがでしょうか。
最後に、TeX Liveを維持してくれている方、様々なTeX関連のファイルを維持してくれている方に圧倒的感謝です。
参考
- TeX Live をホンキで語る ― 「TeX Live ってなんだろう?」 - Acetaminophen’s diary
- TeX Liveが詳しくわかります
- TeX Live/Mac - TeX Wiki
2020/05/13 追記
TeX Live 2020は別の方法でインストールしました。